ロータリー青少年交換

人生の多様性を知った青少年交換プログラムの1年:関根ゆり子さんが語るロータリー体験とキャリアへの道

2016-17年度にロータリーの青少年交換プログラムの交換生としてベルギーに派遣され、現在は東京銀座ローターアクトクラブに所属し、求人ソリューション事業・転職エージェント事業を手掛ける株式会社リクルートで活躍されている関根ゆり子さんにお話を伺いました。

現在のお仕事や近況について、自己紹介も交えてお聞かせください。

2016-17年度にロータリーの青少年交換プログラムに参加し、ベルギーに派遣して頂きました。帰国後はROTEX(ロータリー青少年交換学友)として活動してきましたが、大学を卒業し、ROTEXの活動が一段落したので、2025年7月から東京銀座ローターアクトクラブに入会し、ローターアクターとして活動しています。

大学を卒業後は、株式会社リクルートに就職し、求人ソリューション事業・転職エージェント事業を手掛ける事業部に勤務しています。

私の仕事の内容は、主として、中途採用・転職向けのウェブサイトの求人広告を企業に提案する法人営業です。「Indeed PLUS」という求人配信プラットフォームのサービスを提供しており、「indeed」や「リクナビNEXT」等の媒体を取り扱っています。現在は、日系の機械メーカーや化学メーカーといったEMC領域を主に担当するグループに所属しています。担当しているお客様は日系企業が中心ですが、中には英語での折衝が必要な外資系のお客様もいらっしゃいます。

法人営業の仕事は、折衝の相手方が企業であり、競合他社等もあるため、やりがいはありますが大変な仕事です。私は、スキルアップのために、3か月に一度、自分で戦略を立てて振り返りを行うことを心がけています。目標達成のために「何をどうやって」行うかを、自分の営業スタイルの特徴や数値を分析して検討しています。また、新規顧客開拓においては、過去の実績から電話営業の成功率などを計算し、業界のニーズをキャッチアップしながら優先度をつけて動いています。このような地道な努力の甲斐あって、担当したお客様から「当社のことをこんなに考えてくれる人はいない」とお褒めの言葉を頂けたことは、とても感慨深く脳裏に焼き付いています。

職場の人間関係についても大変良好です。私の同期は、リクルート全体では500人ほどいますが、私と同じディビジョンの同期は現在3名と少数です。少数であることもあり、同期とは非常に仲が良く、月に一度ほどのペースで国内外を問わず一緒に旅行をしており、つい最近もモンゴルに行ってきました。

このとおり、現在は希望する職種に就いて、人間関係にも恵まれ、公私共に充実した生活を送っています。

私がこの人材業界に興味を持った縁由は、ロータリーの青少年交換プログラムの経験に遡ります。私は、東京生まれの一人娘で、中高一貫の私立中学校に通うなど、比較的価値観が狭い中で生きてきました。しかし、ベルギーでの1年間や、その後大学時代の留学を通じて、人生における生き方の多様性や、人それぞれに異なる「幸せな生き方」があることを強く感じました 。その経験から、転職を通じて「もっと幸せな生き方をしたい」と思っている方々をサポートしたいと考え、人材業界を志望しました

学生時代に考えていた仕事は、転職を考える個人に寄り添う仕事でしたが、現在は企業側の採用成功を目標とする法人営業に携わっています。しかし、業界全体としては、誰かの人生が大きく変わり、希望を持って転職する瞬間に携わることができ、やりがいを感じています。将来的には、キャリアカウンセラーの国家資格を取得し、転職を考える個人を支援する業務にも携わりたいと思っています。

ロータリープログラムに応募したきっかけを教えてください。

ロータリーの青少年交換プログラムに応募したきっかけは2つあります。

1点目は、母の勧めがあったことです。私の母は、青少年交換プログラムへの参加経験のあるROTEXで、母自身の経験から、プログラムへの参加を勧められたことです。

2点目は、環境変化への期待を抱いていたことです。先程も少しお話したとおり、私は青少年交換プログラムに応募した当時、中高一貫の私立学校に通っており、毎日が平凡な日々の連続と感じていました 。漠然と、何か環境が変わるような面白いこと、刺激になることをやってみたいと思っていたタイミングで、母から青少年交換プログラムの話を聞き、「楽しそうだな」と環境が変わることに期待を抱きました。

もともと中学生までに習い事を17個くらいやっていたこともあり、興味を持ったら「一旦やってみる」という好奇心もあったと思います。

応募した当時は、これほど大きく人生を変える経験になるとは思っていませんでしたが、青少年交換プログラムに応募し、派遣生となったことが、今の自分に繋がっています 。

ロータリープログラムで体験されたご経験で印象に残ることを教えてください。

印象に残っていることは大きく2つあります。

1つ目は、複数のホストファミリーとの生活です。1年間で複数のホストファミリーにお世話になるという点は、ロータリーの青少年交換プログラムと一般的な留学と大きく違う点です。私は3つのホストファミリーにお世話になりましたが、同じベルギーの小さな町の中にいながら、経済状況、社会的な背景、子供への教育方針などが全く異なるご家庭でした 。

1番目のホストファミリーは、経済的には比較的低所得で、子供が6人おり、障害を持つ子を養子として迎えているご家庭でした。2番目のホストファミリーは、私の日本の家族と似ていて、40代のご両親との3人暮らしで、経済的には平均的なご家庭でした。3番目のホストファミリーは、家具デザインの会社を経営されており、家にプールがあったり、広大な敷地にヤギを放牧したりしているような非常に裕福なご家庭でした 。これだけ違う家族に「一人の家族」として受け入れて頂いた経験は、「人生観の違い」や「人生の選択肢の幅の違い」を痛感する、非常に大きな経験となり、その後の私の価値観の形成に欠かせないものとなりました。

2つ目は、日本とベルギーの学校教育の違いです。 当時、私は教育に関心を持っていたのですが、ベルギーの学校と私が育った日本の学校が全く違ったことがとても印象に残っています 。

ベルギーの学生たちは、プライベートでは真面目とはいえない生活をしている面もありましたが、こと授業に関しては、どんな科目でも非常に真面目に取り組み、全員が積極的に手を挙げて発言していました。この点は先生の授業の作り方が上手なのだと思いました。一方で、ヨーロッパの学校の多くがそうであるように、ベルギーの学校には部活動、体育祭、文化祭などの「課外活動」が一切ありませんでした。学校は純粋に「勉強するための場所」であり、人間関係を学んだり、地域と交流したりする場ではないと感じました。

この違いを知ることで、多様な課外活動を通じて、連帯感や協力の経験を育み、人間関係を深める日本の学校の良さを改めて認識することができました。

ロータリー体験が現在の活動にどのように影響しているとお考えですか?

青少年交換プログラムの経験は、その後の進学、就職、価値観の醸成に大きく影響しています。ベルギーで1年間を過ごすことで、今まで触れたことのないスローライフを体験し私の価値観が変わりました。

ベルギーの人たちは、自分の人生の中で、何が自分に喜びをもたらすのか、何をしている時に幸せを感じるのかを自分で理解していて、それを追求している、周りに流されずに行動に移していると感じました。本当に毎日毎日の小さなことに対して幸せを感じていることが伝わり、私にはとても魅力的に映りました。私は、日本で毎朝虚ろな表情で通勤するサラリーマンの方たちを見ていましたので、日本にベルギーの価値観を持ち込んだら、彼ら彼女らのヒーリングになるのではないかと思ったのです。そのためには、ベルギーの方たちの価値観を私自身がもっと良く知らなければならないと思いました。ベルギーはフランス語圏だったので、大学は仏文学科に進学しました。フランス語学科や政治学科等ではなく、仏文学科を選んだのは、文学のほうが何世紀もまたいで、その土地の人々の価値観や文化を反映していると思ったからです。

青少年交換プログラムの経験は、私の就職にも大きな影響を与えています。ベルギーでの1年間の経験を通じて、人生における生き方の多様性や、人それぞれに異なる「幸せな生き方」があることを感じ、その経験から、転職を通じて「もっと幸せな生き方をしたい」と思っている方々をサポートしたいと考え、人材業界に入りました。

現在の仕事にも大きな影響があります。まず、青少年交換プログラムを通じて、多様な価値観に触れたことは、今の人材関係の仕事に対するやりがいやモチベーションの根源になっています。また、青少年交換プログラムに応募した14歳の頃から、社会でご活躍をされているロータリアンの皆様とお話をさせて頂く機会を得たことで、現在の法人営業の仕事でも、年上のお客様に対して変に緊張したり、肩に力が入りすぎたりせずに対話ができるコミュニケーション能力が培われました。

ベルギーで過ごした1年間で言語能力を習得したことも大きな要素です。1年間の生活で英語、フランス語が自然に身につき、今でも仕事に活きています。外資系のお客様からお問い合わせがあった際には、私が対応を任されることが多く、青少年交換プログラムの経験が実務に活きていると感じています。

ベルギーでの経験、特に経済的に豊かではなかった最初のホストファミリーとの生活を契機として、貧困問題にも関心を持つようになりました。これをきっかけに大学時代にはバングラデシュやネパールなどの開発途上国を訪問し、その経験が、現在所属している東京銀座ローターアクトクラブの国際奉仕委員会での活動(ネパール支援など)にも役立っています。

プログラム参加前のロータリー(ロータリアン)のイメージと、参加後今考えるロータリー(ロータリアン)のイメージの違いを教えてください。あなたにとってロータリーとはどのようなものだと考えますか?

青少年交換プログラムに参加する前は、まだ中学生だったので、ロータリアンの皆様のイメージは、単純に「日本で成功を収めてきたすごい方々」という漠然としたイメージでした 。現在も「すごい方々」であるとのイメージは変わりませんが、自分自身も社会に出て働き始めたことで、その「すごさ」の質が変わりました。ロータリアンの皆様は、日々努力されてきた対価として得た時間やお金を、惜しみなく青少年の育成や開発途上国の支援、環境問題の解決のために託して下さっています。単なる形式だけの奉仕ではなく、お一人お一人が強い信念や思いを持って、実際に活動をされていることを知り、今では心から尊敬する「憧れの存在」となっています 。

私にとってロータリーは 14歳の頃から私の成長を見守ってくださっている存在であり、私の価値観を育む上で「欠かせないもの」存在です 。そして、年を重ねるごとに、今でもまだ私が見たことのない新しい世界を見せ続けてくれる、自分を成長させてくれる存在だと感じています 。

これからロータリープログラムに関わる後輩たちへメッセージをお願いします。

一般に「海外経験」というと、大学生の語学留学や社会人のワーキングホリデーのような、言語をどれだけ伸ばすか、どれだけ学問を学ぶか、といったプラスアルファを得ることが目的のようなイメージをされる方が多いかもしれません。でも、私はロータリーの青少年交換プログラムは中学生、高校生という人生の土台を作る非常に多感な時期に、「小さな親善大使」として、海外の多様な価値観に触れる経験ができる、最も人生への影響度が大きいプログラムだと思っています 。大学生の留学では、ホストファミリーや現地校の学生との生活にどっぷりつかる経験はできません。その土地の生活や文化どっぷりつかる経験は、勉強するために留学生として寮で生活する大学生の留学とは比べられないほど自分の人生に影響があります。

また、中学生・高校生という価値観や進路が決まりきっていない青少年のうちに海外に行って身に付いたものは、価値観形成に影響を及ぼすかけがえのないものだと感じています。この他にも、まだまだ伝えきれていないことや私自身も無自覚なことなど、青少年交換プログラムを通じた経験の全てが、私の血となり肉となりました。青少年交換プログラムを経験しなければ、ときに素敵でときに残酷な広い世界を知ろうとも思いませんでしたし、ここまで色々なことに挑戦しようとも思いませんでした。いま私の周りにいる素敵な仲間達にも出会えませんでした。

できるだけ早いうちに広い世界を見て、多様な価値観に触れることで、皆さんの人生の選択肢や視野は大きく広がるはずです 。青少年交換プログラムへの応募を強くお勧めします 。周りに中学生・高校生の方がいらっしゃいましたら、海外留学やロータリーのプログラムに関心があってもなくても、お勧めしてみてください。

ロータリーには青少年交換プログラム以外にも、米山記念奨学会、RYLA、ローターアクト、ロータリー財団、ポリオ根絶活動など、本当に色々なプログラムがあります。そうした活動に参加することで多方面の方々、活動とのつながりを持てること自体がロータリープログラムの大きな魅力ですので、青少年交換プログラムに限らず、参加する価値は非常に大きいと思います 。

最後にあなたの夢を教えてください。

「世界中の人々が各々の幸せな生き方を見つけて、それを選び、実現できる社会に貢献する」という仕事の軸はぶらさずに、今後はもっと国際的な場所で経験を積んでいきたいと思っています。それが今の人材業界なのか、教育業界に移るのか、あるいはユニセフ等の国際協力に関する分野に移るのかはまだわかりませんが、日本にとどまらず、世界全体で活躍できるような人材になれるよう経験を積みたいと思っています。また、仕事だけではなく、ローターアクトの活動も続けて、将来はロータリアンになって、ロータリーの様々なプログラムに携わっていくことも私の夢です 。



関根 ゆり子
東京銀座ローターアクトクラブ所属。
2016-17年に2750地区より2150地区(ベルギー)にロータリー青少年交換留学生として派遣。
株式会社リクルート勤務
 
インタビュアー: 矢部 陽一( 東京中央RC)
ロータリーファミリー支援委員会 
委員長:宮村 和加子(東京広尾RC)副委員長:杉浦 藤一郎(東京あけぼのRC)
Rotary Family Voice 編集長:中前 緑(東京米山ロータリーEクラブ2750)
編集委員 関端 広輝 (東京愛宕RC)西 優希(東京昭島中央RC)

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