2017-18年度にロータリー財団奨学生として、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(London School of Economics and Political Science)に派遣され、現在は、外資系メーカーに勤務しながら、東京アフリカコレクションの代表も務めている菅生 零王さんにお話を伺いました。
現在の活動について教えてください。
P&Gに勤務しながら、大学時代に立ち上げたファッションショーTokyo Africa Collection (東京アフリカコレクション)の事業運営をしています。P&Gでは、洗剤や柔軟剤などファブリックケア商品のブランドマネジメント・マーケティングに携わっています。既存品・新商品のコンセプト策定から商品の中身、パッケージ、TVCMなど包括的に関わってきました。最近までアジア拠点のあるシンガポールに勤務し、今年から日本に戻ってきました。P&Gの日本の本社が神戸にある一方で、東京アフリカコレクションの活動拠点は東京なので、コロナ対策には留意しつつ、東京と神戸を行ったり来たりしながら働いています。2020年1月のボツワナ・ナミビア出張以来、コロナの影響でアフリカに物理的には行けていないのですが、少し状況がよくなってきたこともあり、近く西アフリカに渡航予定です。
Tokyo Africa Collection (東京アフリカコレクション)
Tokyo Africa Collection (東京アフリカコレクション)は、学生時代の2016年に有志の仲間と立ち上げ、2019年に株式会社東京アフリカコレクションとして法人化しました。アフリカ各国の日本では知られていない魅力を、日本の10-20代のアフリカ無関心層に届けることを目的に、ファッションショー、ポップアップショップ、アフリカ各国のPRなどの企画・運営を行っています。アフリカ各国のブランドを招聘・PRする方法として、他のプロジェクトとは異なり、アジア系のモデルを中心に起用。10-20代の若年層のニーズや嗜好を反映したキャスティング・ブランディング・演出に力を入れています。東京アフリカコレクションの原点は、「アフリカの印象を変えること」「アフリカの良いものを広める」という二点です。
活動の前面には押し出してはいませんが、武力紛争に対して脆弱性のある地域のファッション・エンターテインメント領域の起業家・事業を支援することで、間接的に、また微力ではありますが、現地の紛争予防・平和構築に寄与できたらと考えています。
ありがたいことに、消費者視点からのビジネスに秀でた特性を持つ現在の所属企業で、実務としてのマーケティングなど経験させていただけています。そして志す理念のため、ファッションショーという切り口からアプローチを試みています。
アフリカに興味を持つきっかけは何だったのでしょうか?
中高生の頃、映画を観るのが好きだったのですが、国連PKO活動を描いた「ルワンダの涙」を鑑賞したことで、国際紛争に興味を持ち、大学では紛争について学びました。そして、紛争について理解を深める程、紛争解決や国際平和に貢献したいと考えるようになっていきました。その過程で、2017-18年度のロータリー財団奨学生に応募し、英国ロンドンの大学院(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)へ留学し、武力紛争・紛争解決関連領域への理解を深めました。武力紛争は現在残念ながらアフリカ大陸に集中している一方で、安定している地域も多く、現地で見た状況に驚きました。日本で感じていたステレオタイプ的な印象と違い、ネガティブな面だけでなく、ポジティブな面もたくさん発見しました。
アフリカ大陸は、非常に多様性に富んでいます。国の数としても54か国、いろいろな人種、暮らし、街、地域があります。よくニュースで取り上げられるような紛争や貧困、疫病などの負の側面だけではなく、お洒落なブランドや美食、リゾートだってあるのです。
そんな中で、日本の人々にも本当のアフリカ、ありのままの現実を広く知って欲しいと思いました。ステレオタイプ的な印象だけでなく、偏見を捨てて良いところも見ることで、より対等な関係性を構築できないか。
志を同じくする仲間、考えに賛同してくれるスポンサー様、協力団体様、ボランティアの皆様に恵まれ、2016年に開催した「Tokyo Africa Collection 2016」を皮切りに、これまで4回の主催ショーを実施しました。計2,000名以上の方々にご来場いただき、多数のメディアにも取り上げて頂きました。また主催のほか外部でも、2016年は外務省「Global Festa 2016」、2017年は早稲田大学「Waseda Collection」、2018年は六本木ヒルズハリウッドホール、2019年は在京アフリカ外交団主催「今のAFRICA」、JICA主催「Bon for Africa」に協力し、企画演出に携わりました。
2019年に有楽町朝日ホールで開催したTokyo Africa Collection 2019は、スタッフ一同が今後に手ごたえを感じることができる内容だったと思います。特別ショーディレクターに元AKB48で俳優の秋元才加さんに就任いただき、来場者約600名を動員(満員)、外務省からTICAD7パートナー事業認定を受けた他、JICA、JETRO、アフリカ協会、アフリカ開発銀行やアフリカ各国大使館の後援も受けられました。ショーでは、ナイジェリアのブランドKEEXSと日本のストリートファッションブランドとのコラボレーションのほか、南スーダンから1ブランド、ルワンダから3ブランドを招聘し、オリジナルコレクションと共に会場が盛り上がりました。ショーの制作過程でも、特別ディレクター秋元才加さんとルワンダを訪れ、ルワンダの魅力をPRするプロジェクトも実施し国内外から注目を集めました。
ファッションショー以外にも、2019年には有楽町マルイ、2020年にルミネシンガポールおよびラッフルズホテルシンガポールでのポップアップショップを行うなどの事業展開をしています。
ロータリークラブの会員と関わって感じたこと、後輩へメッセージ。
私への投資を何倍にもして、社会に還元させていただきたいと思っています。ご縁あって奨学生となり、ロータリアンの方々に、とても親切にしていただきました。ロータリークラブからのバックアップは、本当にありがたかったです。これからロータリーに関わる若い方には、「何でもやってみる。アイデアだけで動かないより、不完全でも動いてみる。やってみて、足りない部分をアップデートして改善していく。チャレンジしてみることが大切だ」と伝えたいです。
最後にロータリークラブの方々、ロータリー活動にあらためて感謝申し上げます。今後ともよろしくお願いいたします。
今後の展望などがあれば教えてください。
新型コロナウィルスのために直近は活動に大きな制約がありましたが、少し状況が落ち着いてきたこともあり、ギアを入れなおして、東京アフリカコレクションを大きく育てていきたいと考えています。アフリカをはじめとする紛争の解決には、政治、経済、教育などトータルアプローチが必要です。その一助となるべく、自分自身の活動に関しても、事業として継続していける仕組みを確立し、より大きなものにすることで、本当の意味で社会にスケール感をもって貢献したいと思っています。
どうぞ東京アフリカコレクションやアフリカの国々、わたしどもにご興味のある方は、ご協力、ご助言、ご一緒に活動していただけると幸いです。
菅生 零王 Leo Sugo 株式会社東京アフリカコレクション 代表取締役 P&G ブランドディレクター 2017-18年度ロータリー財団奨学生 スポンサークラブ:東京広尾RC 1993年イタリア生まれ、日本育ち。アフリカをテーマにしたファッションショーTokyo Africa Collectionを立ち上げ、以後代表を務める。2019年に株式会社東京アフリカコレクションとして法人化、代表取締役に就任。ファッションショーの他にも、ポップアップショップ、アフリカ各国のPR企画などに取り組む。傍らP&Gにも勤務(マーケティング本部)。早稲田大学卒業。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス修士課程修了。 インタビュアー:鈴木 豪(東京八王子北RC) ロータリーファミリー支援委員会 委員長:青柳 薫子(東京広尾RC) Rotary Family Voice 編集長:根岸 大蔵(東京城西RC) |
ロータリー財団奨学金制度とは? 国際ロータリー第2750地区ロータリー奨学生の制度は、グローバル補助金を利用し国際ロータリー第2750地区が独自に募集、選考、派遣を行なうものです。奨学生が海外留学を通じ、国際理解と親善を増進し、その国際経験と視野を持って、ロータリーが掲げる7つの重点分野に必要な知識と学力を身に付け、社会人として成長、貢献をしていくことを目的とします。また、ロータリーのネットワークを十分に活用し、ロータリークラブと地域社会と積極的に交流することによって、派遣国と受入国の間の懸け橋となることを目的とします。 詳しくはこちら→ Tokyo Africa Collection (東京アフリカコレクション)とは? Tokyo Africa Collection (東京アフリカコレクション)は、2016年に有志団体として設立され、2019年に株式会社東京アフリカコレクション(本社:東京都港区/代表取締役:菅生零王)として登記したファッションイニシアティブです。主に、アフリカ各国の日本では知られていない魅力を、日本の10-20代のアフリカ無関心層に届けることを目的にしたファッションショーの企画・運営を行っています。 詳しくはこちら→ |