ロータリー財団奨学金

人権課題を伝え、グローバルな問題を解決する糸口に

2017-18年度にロータリー財団奨学生として、ロンドン大学SOAS(University of London, School of Oriental and African Studies)に派遣され、現在は、アムネスティ・インターナショナル日本支部のキャンペーン・コーディネーターとして国内外の人権課題に取り組んでいる樋口利紀さんにお話しを伺いました。

ご自身が所属されているアムネスティ・インターナショナルについて教えてください。

アムネスティ・インターナショナルは、1961年に発足した世界最大の国際人権NGOで、イギリス・ロンドンを本拠に世界200カ国で1,000万人以上がアムネスティの運動に参加しています。アムネスティ・インターナショナル日本は、その日本支部として1970年に設立されました。世界中のさまざまな場所で起こっている人権侵害の存在を、国内に広く伝えるとともに、日本における人権の状況を、国内、そして世界に伝えています。国境を超えた自発的な市民運動が「自由、正義、そして平和の礎をもたらした」として、1977年にはノーベル平和賞を受賞、翌年には国連人権賞を受賞しています。

アムネスティ・インターナショナルで取り組んでいることについて教えてください。

東京事務所で日本支部の職員として勤務しています。現在、国際社会には様々な人権課題がありますが、この課題をどうやって解決していけるかということについて、戦略的に取り組んでいます。例えば、世界中に紛争や迫害等の理由で難民となってしまう方々がたくさんいらっしゃるのですが、日本では外国人の受け入れに抵抗感のある方が多かったり、受け入れの体制が整っていないという課題があります。また、日本の入管収容は人権上の問題があります。オーバーステイなど、在留資格のない外国人は日本から退去するようにと政府から命令がくだされます。多くの方は帰国されるのですが、なかには人生のほとんどを家族と一緒に日本で暮らしている人や、自国に戻ると迫害のおそれや命の危険がある難民認定申請者なども当然います。こういった「帰国できない理由」のある人たちは、数年にわたり、裁判所による介入なしに不当に収容されてしまいます。2019年には長崎で、2021年には名古屋の入管施設で死者も出ています。こういった問題について、国連機関、政府や国会議員の方に、課題とその解決方法について政策提言をしています。また、悪化の一途をたどるミャンマーの危機についても、外務省に対して要請や協議を重ね、働きかけを続けています。
外国人の長期収容問題の解決、LGBTIの人たちに対する差別禁止の法制化、高校生や大学生の人権活動サポートなどが主な仕事です。コロナ禍で人権活動がさまざまな制約を受けている中、コロナ禍が引き起こした人権課題にも様々な対応を迫られています。
日本支部としては、グローバルな課題80%位、ドメスティックな課題20%位の割合で、人権侵害の問題に取り組んでいます。

アムネスティ日本の事務局長や国会議員と、外務大臣政務官とミャンマー情勢について協議

どのようなことがきっかけで人権問題に興味を持つようになったのでしょうか?

高校の授業で世界の様々な課題に目を向ける授業があったことで、大学では国際関係学科に進学しました。その大学時代にイスラエルやパレスチナを訪問し、目の当たりにした環境にショックを受けました。日本で育った私の感覚とギャップに、たいへん驚いたことを覚えています。大学卒業後、国連高等弁務官事務所や難民支援団体にお世話になったのですが、世界で起こっている課題へより深く勉強し取り組むため、ロータリークラブの奨学生に応募しロンドンの大学院に留学させていただきました。
現在、活動をしていてやりがいを感じるのは、社会のために貢献している、もしくは出来ていると実感できた時の充実した気持ちと思います。

ロータリー財団奨学金のプログラムに関わって感じたことを教えてください。

ロータリアンは、日本の方々だけでなく海外(ロンドンの方々)も、皆さんのバックグラウンドが多様であり、バイタリティ溢れる方が多いと思います。ご縁あって奨学生となってから、とても親切にしていただき、留学先のロンドンでもホストロータリアンの方々に献身的なサポートをいただきました。
また奨学生プログラムの良いところとして、奨学生同士の交流も盛んで、同年代の人達から強く刺激を受けたことを思い出します。当時の仲間とは、今でも繋がっています。
これからロータリーに関わる若い方には、「普通に留学していたら出来ない経験をさせてもらえます。とても懐深く助けてくれる方々がいます。勇気をもって飛び込んでみてください」ってお勧めしたいです。

今の日本人に思うこと、自身の将来の展望など。

日本では、若い世代も年長者も総じて人権問題に関心が低いと感じています。日本の学校教育でも取り組みは薄いですし、社会的にも根付いているとは言い難いです。世界との相対で、日本では人権が守られている方だと思います。しかしマイノリティへの寛容さなど、まだまだ立ち遅れている部分もあります。私は日本での活動を通じて、世界で起きていることを伝え、人権や難民などグローバルな問題を解決する糸口の一助となれるよう頑張るつもりです。機会があれば、国連など一層広く社会貢献できるようチャレンジしたいと思っています。

最後になりますが、多大なるチャンスを与えていただいたロータリークラブの活動に深く感謝申し上げます。


 

樋口 利紀 Toshiki Higuchi
2017-18年度ロータリー財団奨学生
スポンサークラブ:東京たまがわRC

2017-18年度、ロータリー財団奨学生としてロンドン大学SOAS(University of London, School of Oriental and African Studies)に派遣。現在は、アムネスティ・インターナショナル日本支部キャンペーン・コーディネーターとして勤務。人権課題に取り組んでいる。

インタビュアー:鈴木 豪(東京八王子北RC)
ロータリーファミリー支援委員会 委員長:青柳 薫子(東京広尾RC)
Rotary Family Voice 編集長:根岸 大蔵(東京城西RC)
ロータリー財団奨学金制度とは?
国際ロータリー第2750地区ロータリー奨学生の制度は、グローバル補助金を利用し国際ロータリー第2750地区が独自に募集、選考、派遣を行なうものです。奨学生が海外留学を通じ、国際理解と親善を増進し、その国際経験と視野を持って、ロータリーが掲げる7つの重点分野に必要な知識と学力を身に付け、社会人として成長、貢献をしていくことを目的とします。また、ロータリーのネットワークを十分に活用し、ロータリークラブと地域社会と積極的に交流することによって、派遣国と受入国の間の懸け橋となることを目的とします。
詳しくはこちら→

アムネスティ・インターナショナルとは?
アムネスティ・インターナショナルは、1961年に発足した世界最大の国際人権NGOです。人権侵害のない世の中を願う市民の輪は年々広がり、今や世界200カ国で1,000万人以上がアムネスティの運動に参加しています。
国境を超えた自発的な市民運動が「自由、正義、そして平和の礎をもたらした」として、1977年にはノーベル平和賞を受賞、翌年には国連人権賞を受賞しました。
アムネスティ・インターナショナル日本は、その日本支部として1970年に設立されました。世界中のさまざまな場所で起こっている人権侵害の存在を、国内に広く伝えるとともに、日本における人権の状況を、国内、そして世界に伝えています。
詳しくはこちら→

おすすめ