ロータリー平和フェローシップ

ジェンダー視点と紛争予防を通じて、平和な社会を構築する

 ロータリー平和フェローシッププログラムでスウェーデンのウプサラ大学での平和構築カリキュラムを修了し、特定非営利活動法人難民を助ける会(AAR Japan)/エーエーアール・ジャパンの東京本部の支援事業部主任として働いている本多麻純さんにお話を伺いました。

現在のお仕事や、近況について教えてください。

 現在は特定非営利活動法人難民を助ける会(AAR Japan)/エーエーアール・ジャパンの東京本部の支援事業部主任として働き、現地の駐在員や現地スタッフと連携した支援プログラムを実施しています。アメリカの大学卒業後、大学院を目指しましたが、途中断念せざるをえず、アメリカ、日本の民間企業で数年勤務しました。その後、AARの創業者の活動理念に大きく賛同し、団体職員として働くことになりました。ロータリー平和フェローシッププログラムに参加する前も、同職場で勤務し、頻繁に支援国の往来を重ねていました。2014〜15年にはトルコに1年間駐在し、現地事務所や事業の立ち上げ、スタッフの採用、事業管理、関係者との折衝など、様々な活動に従事しました。ロータリー平和フェローシッププログラム参加後も同じ職場に復帰し、プログラムで学んだ理論や実践的知識を活かし、支援活動を続けています。プログラム参加前と違うのは、支援活動に確信と自信をもって取り組めていることです。
現地駐在員などと連携し、次の3つの活動に現在力を注いでいます。特に出張の機会が限られている今では「管理」に関わる間接的あるいは後方からの支援が多いです。

1) ミャンマーでの障がい者支援:これまでは障がい者への職業訓練や、障がい児のリハビリや教育支援などを、2020年12月からは新しい取り組みとして障がいの有無にかかわらず、みなが個々の特性やニーズにあった通常教育を受けられるよう、インクルーシブ教育事業を開始しました。ただ、どちらもコロナやクーデターの影響を受け、大幅に規模を縮小し、治安に注意しながら行える活動を優先的に進めるなど、試行錯誤しながら取り組んでおります。加えて、コロナやクーデターの影響を受け困窮する障がい者の家庭に、物資の配布や現金の給付を行なっています。

 私は、主に活動の「管理」を担っています。例えば、活動資金を助成金として得るための事業申請書やドナーに対する活動報告書の作成、活動資金の適正な使用の確認、また現地で締結する各種契約書の確認などが含まれます。より活動内容に近い部分では、現地で行う調査内容や調査方法の確認や助言、教員に対する研修内容の調整を行います。

2)アフガニスタンでの活動内容は爆発物回避教育です。アフガニスタンの現地スタッフが、直接、地雷などのリスクの高い地域に住む住民に対し、講習会を開催しております。同時に、事業の持続性を高める目的で、AARのスタッフではなく、地域のボランティアに爆発物回避教育のノウハウを伝えて自分たちで講習会を行えるような支援活動も行なっています。特に人が集まりやすい学校やクリニック、モスクで、教員などにその役割を担ってもらいます。また、広く啓発メッセージを伝えるために、爆発物回避教育のラジオ番組の制作や、大きな立看板をデザインして設置するというような活動も行なっています。

(※インタビュー後、タリバンのカブール制圧により、アフガニスタン政府が崩壊しました。現地での活動は一旦中断し、現在は現地事務所とスタッフの安全確認や今後の活動再開に向けた情報収集を続けています。)

3)PSEA(Protection against sexual exploitation and abuse:性的搾取・虐待からの保護の取り組みを進める活動も行っています。1990年以降、残念ながら、国際協力の現場で、国際機関や国際NGO等の職員による性的搾取や性的虐待の事例が報告されてきました。それに対し、国連、各国政府、支援機関、NGOが性的搾取・暴力からの保護(PSEA)や予防のための様々な取り組みを進めてきました。日本では、PSEAの必要性がようやく認識され始めたばかりですが、日本での災害避難所なども例外ではなく、様々な被害が報告されています。詳しくは、こちらを参照ください。PSEAは、国際協力の現場で従事する職員や関係者による性的搾取などが起きないよう組織的に意識を高め、具体的な予防・対応策を講じていくための取り組みです。本件については、自ら外部の研修に参加して理解を深めると同時に、複数の有志のNGOからなるワーキンググループに参加し、国際支援の業界全体で意識を高めるための取り組みにも携わっております。また、先日は、自分が担当するヤンゴン事務所の現地スタッフ10名を対象にオンライン研修を行い、講師を務めました。

 コロナ以前は、事業の案件形成(活動内容の企画、調整)や活動のモニタリング(きちんと計画通りできているかの確認)のため、また駐在員の休暇や不足時の人員サポートとして、現地に短期から中期で出張し、直接事業に関わることもありました。ハイチやスーダン、また東日本において、現地のスタッフとともに調査を行ったり、受益者への物資配布に同行したり、完成した障がい者施設などを視察するといった活動がありました。

ロータリー平和フェローシップに応募したきっかけを教えてください。

 AARで、ハイチやシリア等、過去にあるいは現在進行形で武力紛争の影響を受けている国で支援活動をする中で、紛争の予防や解決などに関心を持ち始めました。その頃、スーダン事業の同僚であった宇治川貴史さん(平和フェロー15期生)にフェローシップの話を聞いたことがきっかけとなりました。宇治川さんは、ロータリーの平和フェローシッププログラムでスウェーデンのウプサラ大学に留学することが決まっており、その話を聞き是非自分もチャレンジしたいと思い応募しました。
ウプサラ大学を選んだ理由としては、入学申請時に、世界にある5大平和センターをリサーチした結果、紛争の原因から紛争解決の手段まで、包括的なカリキュラムを2年間かけて学べること、また、選択科目としてわたし自身が大変興味をもつ、ジェンダーと紛争の関係や、調停、交渉などが含まれていたことがプログラムの魅力でした。またこの大学の特徴として、リサーチに力をいれていることが挙げられます。わたし自身紛争地における支援活動の現場経験はあるのですが、学術的なアプローチに関する知見はなかったため、紛争や平和構築に関する理論やリサーチの具体的な手法を学べることを知り、この大学を志望しました。また子供(留学当時1歳4ヶ月)を連れて家族留学となったので、保育園などの福祉サービスが充実したスウェーデンの魅力も大きな動機となりました。しばらく学業から離れていたこともあり、大学院での勉強は厳しかったです。毎日大量の資料を読みこなし、レポートを作成するというのはとても大変でしたが、ウプサラ大学には手厚くサポートしてくれる体制が整っていますので、とても心強かったです。これもこの大学を薦めるポイントになります。

 プログラムの中で現地のロータリークラブ(会員数40名程度)に年に数回お邪魔しました。日本から来た両親を連れて例会訪問したこともあります。みなさん最初からとても温かく迎えてくれました。2人のホストマザーと出会い、そのうちのお一人とは今でも連絡を取り合っております。子供を保育園まで迎えに行ってくれたこともあり、今でも忘れずに子供への誕生日やクリスマスプレゼントを送ってくれるなど交流を続けています。実は、ホストマザーが家族で来日し、北海道で開催されるクロスカントリーの大会に参加する予定が、コロナ禍の影響でキャンセルになってしまいとても残念です。早く会いたいです。

卒業前のアニュアルセミナーにて修士論文を発表

ロータリー体験が現在の活動にどのように影響しているとお考えですか?

 自分が学びたい内容が意欲的に学べたことはとても大きいことですが、学問以外に一つ選ぶとしたら、ホストマザー(医師の女性と、ISO監査コンサルタントを務める女性ロータリアンのお二人)との出会いが今のわたしの人生に大きく影響しています。この2人からは育児をはじめ、社会との接し方など、色々と人生の先輩として教えていただきました。本業のお仕事以外に合唱や園芸の趣味を楽しまれ、ロータリー活動にも精力的に従事され、豊かで、愛情と奉仕の精神に満ち、かつタフな生き方は、女性としてもとても参考になっています。

ロータリーホストマザーのアニカと彼女のサマーハウスの前で
冬休みに家族全員招待してくれ、スウェーデンの本格的なクリスマスを経験

プログラム参加前のロータリー(ロータリアン)のイメージと、参加後今考えるロータリー(ロータリアン)のイメージの違いを教えてください。あなたにとってRotaryとはどのようなものだと考えますか?

 AARの職場でロータリークラブから支援を受けたことがあり、寄付を受けた団体職員とし プログラム参加前に、AARの職場でロータリークラブから支援を受けたことがあり、寄付を受けた団体職員としてロータリークラブの例会に参加させていただいたことがあります。とても華やかな例会で、緊張して事業発表をしたと記憶しています。今回の平和フェローシップのプログラム参加を通じて、ロータリーという団体が平和構築と紛争予防を目標に掲げられており、また私が関心を寄せるジェンダー問題にも積極的に取り組まれていると感じました。また私が関わったロータリアンは、日本でもスウェーデンでも皆様が親身に相談にのってくださいました。わたしが無事にプログラムを終了でき、今の関係があることを心から感謝しております。

これからロータリープログラムに関わる後輩たちへメッセージをお願いします。

留学経験がない方にも是非、臆せず平和フェローシッププログラムにチャレンジして欲しいと思います。
私はアメリカにおいて大学と大学院での1年の経験があったので、語学力には問題はありませんでしたが、特に留学中、自分の言葉で考えて、意見としてアウトプットする力が不可欠だと感じました。それができると英語で考える力、文章にできる力が自然とついてくると思います。申請時に必要な語学力としては、まず英語での授業が受講でき、入学後少人数でディスカッションするセミナー(日本でいうゼミ)で、他の生徒の論文を読んでそれを一緒に批評・議論する力も求められますので、このプログラムに応募する前に事前に身につけられることをお勧めします。日本人でもこれまで多くの方がチャレンジして選考されてきています。ロータリアンはとても親切に手厚くサポートしてくれることを私は身を持って体験してきました。是非みなさんも勇気を出してチャレンジしてください。もしウプサラ大学や平和フェローシップに関心があり、申請方法や申請書の内容などにアドバイスが欲しいとうい方などいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。できる限りサポートさせていただきます。

卒業式に同期の平和フェローと

最後に将来の夢を教えてください。

 私が大学院で身につけた平和構築に関する知識を、現地で実践に活かしたいという思いが 私が大学院で身につけた平和構築に関する知識を、現場で実践に活かしたいという思いが強くなりました。再び海外の現場で、個人的に関心の高いジェンダー問題を含め、学んだ知識を活かした活動を展開したいと考えています。また、スウェーデンで子育てをした経験、社会の子供に対する接し方にも関心があります。スウェーデンでは、子供を、親の所有物や延長として捉えるのではなく、「1人の立派な人格をもった個人」として尊重していることを実感しました。当たり前、と思われるかもしれませんが、両国で生活をすると、結構違いがわかります。簡単な例を挙げると、日本では、大抵の大人は、子どもに話しかける意図があっても実はその横にいる親に話しかけていたり、親の反応を待っていたりします。親に気を遣っているのでしょうが、ある意味子どもの存在は半分無視しています。スウェーデンでは、バスで出会った人であっても、子どもに話しかけるときは、子どもの目を見て話し、親の反応ではなく、子どもの回答を待ちます(たとえ1歳児であったとしても!)。子どもが何か言いかけているときに親が会話に割って入ろうとすると、「ちょっと待って、今この子と話しているから」と制止されます。ある意味親が無視されます(笑)。これは、子供だけでなく、あらゆる他者への態度に共通する視点であるととらえています。国際協力の場でありがちな、「支援をしてあげている」という上からの目線ではなく、支援を必要としている人それぞれの人格と人権、個々の考えを尊重し、共に平和な社会を造っていける存在でありたいと考えています。また、わたし自身がプログラム申し込みの時から沢山のロータリアンにお世話になりました。自分も次世代の方たちを支えていける存在となり、社会に奉仕できるようになればと日々感じています。


 

本多 麻純 Masumi Honda
2017-18年度 ロータリー平和フェロー
スポンサークラブ:東京日本橋RC

アメリカに留学時の9.11同時多発テロや帰国してからの東日本大震災での体験から国際協力を志す。2017-18年度国際ロータリー第2750地区平和フェローとしてスウェーデンウプサラ大学の平和センターでカリキュラムを修了。現在は、特定非営利活動法人難民を助ける会(AAR Japan)/エーエーアール・ジャパンの東京本部の支援事業部主任として働き、現地の駐在員や現地スタッフと連携した支援プログラムを実施している。

インタビュアー:中前 緑(東京米山ロータリーEクラブ2750)
ロータリーファミリー支援委員会 委員長:青柳 薫子(東京広尾RC)
Rotary Family Voice 編集長:根岸 大蔵(東京城西RC)
ロータリー平和フェローシップとは?
毎年、ロータリー平和センター提携大学で学ぶ最高130名のフェローが世界中から選ばれ、ロータリーからフェローシップ(全額支給の奨学金)が授与されます。フェローシップには、授業料・入学金の全額、滞在費(宿舎・食費)、往復航空券、インターンシップと実地研修の費用が含まれます。
2002年に創設されて以来、ロータリー平和センターは1,400人以上のフェローを輩出してきました。これらのフェローは現在、115カ国以上で活躍し、政府、NGO、軍、教育、法執行機関のほか、国連や世界銀行といった国際機関でリーダーシップを発揮しています。
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AAR Japan[難民を助ける会]とは?
1979年にインドシナ難民支援を目的に日本で発足以来、活動地域や分野を広げながら、65を超える国・地域で難民支援を展開している。現在は世界14カ国で活動している。
1997年には、AARが主要メンバーである地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)がノーベル平和賞を共同受賞。他にも、1999年に読売新聞国際協力賞受賞、2008年に沖縄平和賞受賞。また1998年には、国連経済社会理事会(ECOSOC)の特殊協議資格を取得している。
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