RYLA

東アジアの次世代が「近くて、遠い」と言わない社会を創る

2011-12年度RYLA(Rotary Youth Leadership Awards)に参加し、現在は、東アジアについての次世代教育に取り組んでいる長川美里さんにお話を聞きました。東アジアに興味を抱いたきっかけから、現在の活動、ロータリーとの関わりについて語ってもらいました。

長川さんの活動について聞かせてください。

私の人生の軸は、東アジアの次世代、特に若い世代が、「(地理的に)近くて、(心理的に)遠い」と言わない社会を構築することです。この目標に向かって自分の活動をどう設計していくかということを常に考えながら生活をしています。現在、主に取り組んでいることは、東アジアにおける日本社会の平和教育と、若い世代に対しての社会課題への取り組みの促進で、ユースエンパワメントといわれる分野になると思います。
この基本的な軸に基づいて、主に3つの活動をしています。1つ目は、フルタイムで勤務しているグロービス経営大学院での仕事です。グロービスでは英語大学院側でスペシャルプログラムの開発・企画を担当しており、中国やタイの提携校と実施するプログラムや、テクノベート(テクノロジーとイノベーションのグロービス独自の造語)と呼んでいる所謂デジタル分野でのプログラムを開発しています。2つめは、社会変革やシチズンシップ分野の教育団体であるWake Up Japanの理事をしています。ここでは、「東アジア平和大使プロジェクト」を2020年度に年間事業として立ち上げ、現在は月1回の対話をオンラインで実施しています。このプログラムでは、日中韓の平和や歴史、社会、文化、経済などについて、回のテーマに合わせたゲストと参加者が一緒になり、少人数で対話を実施しています。3つめは、世界経済フォーラムにより組織されているGlobal Shapers Community 横浜ハブでの活動です。世界にはグローバルな若い人のネットワークがたくさんありますが、ここでは主に、地域社会の課題に取り組む人が増えれば世界でも様々な変革が促進されるという考えのもとに様々な活動が行われています。ここでは、横浜でのプロジェクトに加え、北東アジア地域(日本、韓国、モンゴル地域)のCommunity Championという地域のリレーションを構築する役割も担っています。

Global Shapers Communityのジュネーブでの年次会合の様子

私は主に日本で生まれ育っている方に向けて東アジアに関するプロジェクトを実施することが現在は多いのですが、私がこの活動をやらなければいけないと思った理由があります。大学院時代、日本・中国・韓国の3カ国を巡りながら研究をしていて、私が感じた決定的な違いは、日本の若い世代は、中国や韓国の若い世代と比べて現代史を知らない人が圧倒的に多いことです。私も例外ではありませんでした。これの何が問題かというと、互いが出会った際に、理解のギャップが生じるということです。私はこれがもったいないと思いました。未来志向の若者が多い中で、関係を築きたくても、ふとした瞬間にどちらか一方が知っていることがわからない、なのでお互いもやもやしたままになってしまう。そういう状態がこれまでも続いてきたからこそ、75年以上たった今も互いに対しての国民感情がよくない状態が続いているのではと思ったのです。現実的なことを言えば、東アジアにおいて、中国と韓国が経済的・文化的にも発展し、それぞれの強みをグローバルで魅力的に発信している今、日本がこの二ヵ国と手を携えて未来をつくっていく事は必須です。そして日本で一番多い外国籍の方々は、中国、韓国です。私達ひとりひとりがどのような姿勢でこれらの国の方々と接していくかということはとても重要だと考えます。

Wake Up Japanで実施した東アジアの和解についてのワークショップ

東アジアに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

東アジアに興味を持ったきっかけは高校時代に1年間アメリカに留学したことです。アメリカでの生活は、私が予想していたものとは異なり、私立の小さなインターナショナルスクールでは韓国を中心に多くの東アジアの人たちと素晴らしい時間を過ごしました。ところが、アメリカでは心が通じ合っていた東アジアの人々が、日本に帰ってくると、様々な政治や国際関係から、心理的にとても遠く感じるようになってしまったのです。
一番大きな転機は、上智大学国際教養学部在学中に、国連協会が主催している日中韓ユース・フォーラムに参加したことでした。これを機に、東アジアのにおける課題に取り組みたいと思い、文部科学省の世界展開力強化事業の「CAMPUS Asiaプログラム」を、東京大学公共政策大学院が採択したことを知り、一期生として入学しました。私たちはこのプログラムで2年半の間に、1年は東京大学、1年は北京大学、半年をソウル大学で学びました。一期生だったこともあり、私たちの希望を多く取り入れていただきプログラムが進んだことが特に印象に残っています。

北京大学の卒業式(ダブルディグリーで修士取得)

私は慰安婦問題を専門に研究をしたのですが、この問題を研究して非常に良かったと思うのは、韓国や中国でも当事者の方に直接お会いし、お話を伺うことができたことです。
慰安婦問題を扱っていると、多くの方は私の政治的スタンスを気にすることが多いのですが、そうではなく、彼女たちが次の世代に何を伝えたいのかということと、政治的なスタンスにとらわれずに私たちがすべきことを大事にして研究できたことがとても良かったと思います。
特に印象に残っているのは、慰安婦をされていた母親を自殺で亡くされた方を中国の山西省で訪ねた時、次世代の人々には母親が子供に愛情を注ぐように平和を受け継いでほしいとおっしゃられたことです。このことを日本社会に伝えなければならないと思いましたし、慰安婦を慰安婦としてしか見ないのではなく、その時代に生きた一人の女性として見ることが大事だということに気付かされました。人の痛みに寄り添い、平和を伝えていく事は私たち全員が持っている普遍的な大切な価値観だと思います。

RYLA(Rotary Youth Leadership Awards)に参加されてから、ロータリーとのお付き合いも長いですよね?

ロータリーの好きなところは、ロータリアンやロータリーファミリーは優しい方が多いことです。私が何かやりたいことがある時に、それに共感して応援してくれる方々がたくさんいらっしゃいます。あとは前向きでポジティブな方が多いところです。
20歳の時に参加したRYLA(Rotary Youth Leadership Awards)では、「将来」に関するテーマでグループディスカッションをしたのですが、異なるバックグランドの方々と「将来」について語り合ったことが、自分自身について考える大きなきっかけになりました。また、自分の考えを人に発信することや、たくさんの大人が未来に向かって前向きに行動しているということを知れたことはとても良かったと思います。
2014年にシドニー国際大会で開催された、International RYLAに参加できたことも印象に残る体験でした。世界中から集まった、ROTEX、Rotaracter、RYLArianのロータリーファミリーはとても面白い方々が多かったです。自分から社会を変えていこうという方が多く、今でもSNS等ではコミュニケーションを続けています。
ロータリーでは私の人生を応援してくれるサポーターの方々を多く見つけることが出来たと思います。自分とは全く異なる考えを持つ方々と一緒に何かに取り組み、仲良くなることができるのも大きな魅力の一つだと思います。

International RYLAでの一幕

最後に、将来実現したいことを教えてください。また、これからロータリーに関わる若い人にメッセージをお願いします。

東アジアの次世代が「近くて遠い」と言わない社会を創りたいです。そのために、私自身も東アジアをテーマにした書籍を執筆したり教育機関を立ち上げたりする挑戦をしたいと考えています。
これからロータリーと関わる若い人には、ロータリーを通じてたくさんの良い人と出会ってもらいたいです。自分を応援してくれるサポーターやメンター、仲間に必ず出会うことができると思いますので、そういった出会いを自分の人生の糧にしていってもらいたいと思います。


 

長川 美里 Misato Nagakawa
2011-12年度 RYLArian
スポンサークラブ:東京自由が丘RC

RYLArian Network 共同設立メンバー、初代代表。東京大学公共政策大学院Campus Asia、北京大学国際関係大学院修了。高校時代の米国留学他、中国、韓国双方への留学経験を持ち、東アジアの次世代の和解と共生に情熱を注ぐ。グロービス経営大学院にて英語特別科目の開発・企画を担当する他、若者の社会参画を促進するWake Up Japan の理事として、主に東アジアの和解や社会課題に対してのプログラムを大学や一般向けに多数実施。2020 年には「東アジア平和大使プロジェクト」を立ち上げ、2021 年度の一部プログラムは財団法人李熙健韓日交流財團の助成事業となる。また、世界経済フォーラムより任命されるGlobal Shapers 横浜ハブのメンバーとして、横浜100人カイギの立ち上げや、広島ジュニア国際平和フォーラムでの一部プログラムを担当した他、現在は北東アジア地域のCommunity Champion を務める。

ロータリーファミリー支援委員会 委員長:青柳 薫子(東京広尾RC)
インタビュアー / Rotary Family Voice 編集長:根岸 大蔵(東京城西RC)
RYLA(Rotary Youth Leadership Awards)とは?
RYLAのイベントは、14〜30歳までを対象として、地元ロータリークラブやロータリーの地区によって開催されます。地元のニーズに応じて、1日のセミナーから数日間の合宿まで、さまざまな形式が取られます。最も多いのは、さまざまなトピックのプレゼンテーション、アクティビティ、ワークショップなどを含む、3〜10日にわたるイベントです。
参加対象はそれぞれのイベントによって異なります。リーダーシップの力を引き出すことを目的とした中学生対象のイベントから、創造性のある問題解決力を養う大学生対象のイベント、ビジネス倫理について学ぶ若い社会人対象のイベントなどがあります。
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Wake Up Japanとは?
Wake Up Japanは、国内外の社会問題に取り組む人々のプラットフォームです。 社会変革のためのリーダーシップ・トレーニング、ワークショップ開発、社会問題の発信、対話機会の創出を行っています。
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Global Shapers Communityとは?
Global Shapers Communityは、世界経済フォーラムにより組織される、多様なバックグラウンドを有する20-30代の若者によるコミュニティです。 地球上の人口の過半数が27歳以下の若者であることから、社会の若者へのエンパワメントを推進するために組織され、一人ひとりが経験やリーダーシップの可能性、社会に変革をもたらすというコミットメントを元に世界経済フォーラムに選ばれております。世界各国の都市でHUB(ハブ)と呼ばれる地域拠点を立ち上げて集まり、ハブに所属するメンバーは「Shaper」と呼ばれます。
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CAMPUS Asiaプログラムとは
CAMPUS Asiaプログラムは、日中韓の大学が学生や教職員の交流を促進し、密接な協力関係の中で次世代アジアを牽引するグローバル人材を育成するという構想のもと、文部科学省「大学の世界展開力強化事業」の一つとして始まったプログラムです。東京大学公共政策大学院はこの事業が始まった2011年当初からCAMPUS Asiaプログラムに参加し、北京大学国際関係学院、ソウル大学校国際大学院とともにBESETOというコンソーシアムを形成して、大学院レベルでの3方向ダブル・ディグリーと交換留学という難易度の高い日中韓交流に挑戦してきました。
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