ロータリー財団奨学金

多文化共生の実現へ!〜目の前に降りてきたチャンスは必ずつかみとる〜

2017-18年度にロータリー財団奨学生として、カリフォルニア大学ロサンゼルス校に派遣され、現在、メキシコで多文化共生教育に取り組んでいる岩村華子さんに、メキシコでの活動の様子や、ロータリーとのコラボレーション、将来の展望を伺いました。

現在はメキシコにお住まいとのことですが、お仕事とメキシコの近況についてお聞かせください。

現在メキシコの首都メキシコシティーに住んでいます。私立校「日本メキシコ学院」で文化交流企画局長として勤務しております。日本メキシコ学院は、メキシコでは学力上位校といわれ、生徒は皆公共手段を使った経験がないような、比較的裕福な家庭の生徒が多いのが特徴です。幼稚園児から高校生までが在籍し、日本コース約100名、メキシココース約900名の2コースの生徒に対し、多文化共生プロジェクトの展開、コミュニケーションの推進、教育的観点での多文化共生理解推進を日々行なっております。多文化共生教育には、他との違いを意識し、自分を理解し、他を尊重できる心をもった将来を担う子供を育てていくことが不可欠だと感じています。そして、それこそが私の目指す活動です。パンデミックの影響下でも、多文化で生活する同世代交流を目的に、オンラインで海外学校との交流企画も実現することができました。この学院での勤務は実は2回目で、元職場であるメキシコ大使館の同僚達の出身校ということもあり、優秀な卒業生たちを知り、多文化共生を実践されている学校との事で興味をもち、以前に勤務を経験しておりました。そしてUCLA を卒業後、学院より再度局長のポジションを紹介いただき、現職に至っています。メキシコ人、日本人、日系人も含め部下35名をまとめるポジションで、忙しい日々ですが、仕事上のコミュニケーションでも多文化衝突を日々実体験し、大変充実した日々を過ごしております。

ロータリー財団奨学生に応募したきっかけを教えてください。

ロータリーについては日本で茶道を嗜んでいた事もあり、裏千家千玄室大宗匠の書籍を通じて知っていました。日本やメキシコでの就業経験を経て、大学院留学を目指すようになりました。旧アジア経済研究所開発スクール(JETRO主催の研修プログラム、現在は終了)に参加した際に、同期も財団奨学金に興味があり応募するということで、その内容に興味をもち応募に至りました。海外の大学院留学費用はとにかく高額ということもあり、夫や家族も応援してくれ、応募に挑戦しました。自分なりに色々調べて選考会に挑みましたが、優秀な方が多く、選考に受かるのも難しい印象でしたので、合格結果をもらった時には大変嬉しかったのを今でも覚えています。
今振り返ると、メーカー勤務だった父の仕事の関係で、幼い頃に自宅に中南米からの来客があり、家庭でもスペイン語が飛び交い、文化や言語に興味も深まったのだと思います。大学の第二言語もスペイン語を専攻しました。大学では社会学、経済学を学び、卒業後すぐに青年海外協力隊としてパラグアイに赴任しました。現地の子供達に対する教育活動を行うのですが、草の根活動では、教育の継続が困難であるというジレンマを痛感しました。専門家が去った後、村の子供たちが教育を続けられる社会とその持続可能なシステムを構築しなければ変えられないと感じたのです。そのためには中・上級階級の人への教育がとても肝要だと感じました。そのような経緯で、在日メキシコ大使館、メキシコの日本メキシコ学院で就労した後、開発スクールを経て、知人のアドバイスもあり大学院進学を目指しました。

開発スクールの仲間たちと。ロータリー財団奨学金のことを教えてくれた同期が私の左横の藤原周平さん

 

財団奨学生としての体験で印象に残ることを教えてください。

大学院進学を考えた時に、英語の不安があったので、スペイン語で生活ができそうなアメリカを選択し、私が目指す「多文化共生教育」に特化したプログラムや講師陣が充実していたUCLAを選択しました。この大学院に入学後、特に良かったと思えた事は、イギリスの大学院カリキュラムと違い、アメリカでは専門専攻以外に、自分が興味ある教科を選択し学ぶ事ができるなど、自分の知識を大いに増やすことができた点です。そして何よりもお金の不安を感じる事なく勉学に没頭でき、ロータリーの活動に参加できたことも貴重な体験でした。UCLA在学中に日米両ホストクラブの例会に参加したり、同じく財団奨学生の先輩である中曽根牧子氏が日系人の方と作られたリトル東京ロータリークラブの例会やグローバル補助金を活用しての青少年に対する平和教育支援活動に意欲的に参加しました。おそらく私は財団奨学生としても、ロータリーとの接点が多い方だと思います。

5280地区Westwood Village RC初例会に参加。サンクスギビングなどにもご自宅にご招待いただくなど、プライベートでもロータリアンの皆様にはとても良くしていただきました。
5280地区ポリオ撲滅イベント。左は青少年交換OG、右は同期のGG奨学生です。特に右のフランス出身コレリーとはUCLAも一緒で、在学中色々なところに一緒に遊びに行きました。現在も仲良くしています。

 

パンデミックの影響にもかかわらずロータリー財団地区補助金を活用して東京調布むらさきRCとメキシコのチャプルテペックRCとの合同奉仕プロジェクトで公立小学校に電子黒板をおくる活動に関与されたと伺いました。このプロジェクトの体験を詳しくお聞かせいただけますか?

元々私がお世話になった東京調布むらさきRCとはメキシコに赴任したら何か合同プロジェクトを企画しようというお誘いをいただいておりました。そこで地元のロータリークラブとのご縁を繋いでくれたのが、パブロ・プーガ氏(米山学友・東京広尾RC)でした。パブロ氏が現地のチャプルテベックRCをご紹介くださり、現地ロータリークラブと日本のロータリークラブとの合同プロジェクト構想が始まりました。グローバル補助金か地区補助金かの意見交換や、現地のニーズ調査など8回以上にわたる会合にも同席させていただきました。電子黒板寄贈式は現地クラブでは対面/ZOOMのハイブリッド式で日本とはZOOMを繋いで開催しました。
詳しい内容は東京調布むらさきRCのホームページにも記載いただいておりますので、ご参照ください。

メキシコ合衆国の公立小学校へ電子黒板を寄贈。

 

ロータリー体験が現在の活動にどのように影響しているとお考えですか?

メキシコでの地区補助金プロジェクトに携わった後、ロータリーのイメージが少し変わりました。以前に海外青年協力隊(パラグアイ赴任)で、ロータリーやライオンズクラブの団体名は馴染みがあり、裕福な方が参加される国際奉仕団体という認識はありました。今日までの関わりを通じて、ロータリアンは、真剣に熱意を持って世の中を良くしようと、社会貢献や平和構築を目指して尽力されている方の集まりだと感じるようになりました。実際に2時間もロータリーについて熱意をもってお話しされるロータリアンがいらしたり、普段お目にかかれないようなセレブリティの方でも私に気さくに話しかけてくれたりと驚く事もありました。
ロータリーの魅力は、なんといっても世界規模のネットワークだと思います。グローバルに活躍する学友たちは、大半が国際協力の分野で活躍している人たちであり、プログラム終了後、自らがロータリーとの関係性を切らなければ、自分の専門性やキャリア形成に必ず恩恵をもたらしてくれると信じています。
ロータリーは皆が胸につけているロータリーバッジ一つで、仲間と出会え、世界が繋がる、そして世界平和を願い、共通の価値観を持った国際奉仕団体だと思います。

将来の夢を教えてください。

世界のどこかに自分の学校を作りたいです。私が理想とする多文化共生のモデルとなるようなコミュニティを作りたいと考えています。将来はメキシコだけでなくアジアやアフリカにも目を向けて更に活動を展開したいと願っています。

東京あけぼのRCでの児童養護施設での奉仕活動参加。私が教育に興味があることを知ったロータリアンが誘ってくれました。

 

プログラム修了後、ロータリーと疎遠になっているロータリーファミリーがいたら、何かアドバイスがありますか?

是非とも遠慮しないで連絡を取り合って欲しいと思います。私は経験を通じてロータリアンはどこでも学友を大歓迎してくれる事を知っています。ロータリアン側も、もしかすると仕事や家庭のことで忙しいだろうからと察して、学友たちに連絡をとるのをためらわれているかもしれません。是非遠慮なく、気軽に声をかけあって欲しいと思います。そのような関係をずっと続けていけたらとても素晴らしいことだと思います。

東京調布むらさきRCでの例会と納涼会の様子。


 

岩村 華子 Hanako Iwamura
2017-18年度ロータリー財団奨学生
スポンサークラブ:東京調布むらさきRC

2017-18年度、ロータリー財団奨学生としてカリフォルニア大学ロサンゼルス校に派遣。日本メキシコ学院にて文化交流企画室長として勤務。多文化共生教育に取り組んでいる。

インタビュアー:中前 緑(東京米山ロータリーEクラブ2750)
ロータリーファミリー支援委員会 委員長:青柳 薫子(東京広尾RC)
Rotary Family Voice 編集長:根岸 大蔵(東京城西RC)
ロータリー財団奨学金制度とは?
国際ロータリー第2750地区ロータリー奨学生の制度は、グローバル補助金を利用し国際ロータリー第2750地区が独自に募集、選考、派遣を行なうものです。奨学生が海外留学を通じ、国際理解と親善を増進し、その国際経験と視野を持って、ロータリーが掲げる7つの重点分野に必要な知識と学力を身に付け、社会人として成長、貢献をしていくことを目的とします。また、ロータリーのネットワークを十分に活用し、ロータリークラブと地域社会と積極的に交流することによって、派遣国と受入国の間の懸け橋となることを目的とします。
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