ロータリー米山記念奨学金

格差を是正し、明るく豊かで幸せに暮らせる世界の実現へ

2012-14年度にロータリー米山記念奨学金プログラムに奨学生として参加し、現在は、株式会社ミスミのエレクトロニクス営業チームで東日本のエリアマネージャーを担当している陳 瑶(ちん よう)さんに来日のきっかけや日本での生活で得たもの、人生の目標について伺いました。

普段のお仕事はどんなことに取り組んでいますか。

株式会社ミスミのエレクトロニクス営業チームで東日本のエリアマネージャーを担当しています。当社では、製造業と商社のハイブリッドのような事業を行っています。世界有数のサプライチェーンの一員として、お客さまが求める「高品質・低コスト・確実短納期」のオリジナル性の高い商品、サービスを提供し、世界の製造業を裏方として支える事業をしています。具体的には、多国籍企業を主たるお客様として、製造業の部品調達のほか、これまでに積み上げてきた当社のリソースを使ってコストダウンやソリューションといった提案やコンサルタントに類する業務も行っています。コロナ渦の影響で、部品の置き換えなどの提案や実行もしています。そして、日本における生産年齢人口の減少、さらに2000年4月以降、中小企業の月当たり45時間以上の残業が原則禁止されたことにより、日本における労働生産性が年々落ちているのが実情です。このような現況に対し、株式会社ミスミの一員として「meviy(メヴィー)」(板金、切削の加工品を対象に3秒見積、最短1日出荷)という革命的なオールオンライン完結サービスで日本製造業のDX化を促進し、労働生産性の改革を実現できるように日々奮闘しているところです。

日本に留学しようと思ったきっかけを教えてください。

18歳まで中国の高校で過ごし、日本に来ました。きっかけは、幼い頃に体験した中国甘粛省でのボランティア活動で、貧困生活を目の当たりにし大きな衝撃を受けたことです。当時の中国山間の農村は経済的に貧しく、土と藁で作った家屋に住みながら劣悪な環境で細々と酪農などを営んでいました。その現実を目の当たりにし、貧困の解決や格差是正に興味を抱くようになり、BOPビジネスを学ぶため三重の四日市大学に私費留学で来日しました。BOPとは「Base of the Economic Pyramid」の略で、主に開発途上国のBOP層を対象とした持続可能なビジネスを行いつつ、貧困層の自立、そして貧困から脱出することを目指すソーシャルビジネスのことです。具体的にはバングラデシュのグラミン銀行によるマイクロクレジットなどの事例があります。また、戦後30年間で大きな経済成長を遂げ、他の国と比較しても格差や貧困の少ない日本の社会にも大きな興味を持ちました。大学で様々なことを学ぶうち、中国だけでない世界の貧困問題を知るようになり、格差是正や貧困層への支援をしたいという意思がさらに強くなりました。

人生の転機、素晴らしいカウンセラーとの出会い。

四日市で過ごす中、ご縁あって四日市東RCがスポンサーで米山記念奨学金の奨学生となることが出来ました。そこで出会ったカウンセラーの方が、大きく私の人生に影響を与える事になります。カウンセラーのロータリアンは私に多くのチャンスをもたらしてくれました。振り返っても感謝の言葉しかありません。日常生活の指導のみならず、我が子と同じように扱っていただき、親身になって相談や励ましをしてくれました。ロータリー米山記念奨学金、そして、ロータリアンの皆様からのご寄付のおかげで、未来への扉を開くための勉強や努力に集中する時間を過ごせたことで、東京外国語大学大学院で学ぶ機会を得ることなり、いよいよ貧困問題への行動を起こせるようになったのです。課題の提起、現状の把握、問題点の抽出、解決策の模索、結果のフィードバックを注意深く精査しながら、具体的な行動として、会長を務めた米山学友会を通じ、カンボジアと中国の貧困層への支援を実行しました。今の私は、四日市でお世話になったカウンセラーの方の応援があったからこそであり、社会に出た現在でも、そのご縁と恩は忘れることがありません。

スポンサークラブのカウンセラーと。

日中韓、東南アジアを結ぶ懸け橋、人生の目標。

これまで体験してきたこと、出会った人達、職業を通じて身につけたスキル、どんな経験も未来につながると確信し、点と点、線と線を繋げ、未来を切り開く努力をしていきます。貧困に直面している人を自立へと導くために、押し付けではなく、そっと手を差し伸べる感覚。魚を手渡すのではなく魚の釣り方を教える、という行動が大事なのかなと思います。例えば現地に本を寄贈する場合、カンボジアではカンボジア語の本より英語の本の方が安く流通しています。英語のニーズが高く、日常的に英語を使うのかなって思ってしまいますが、学校の現場ではカンボジア語の本が欲しいということがありました。母国語と文化を守るためにも、値段が高くてもカンボジア語の本が必要だったのです。その人達の状況や社会を理解し、思い込みによる誤解を排除して、的確な支援を探ることが肝要ではないでしょうか。いつの日か貧困地域の格差を是正し、持続可能な社会や国、明るく豊かで幸せに暮らせる世界の実現に貢献したいと考えます。

第2750地区学友会のカンボジアでの国際奉仕活動の様子。

後輩の方へメッセージがあれば聞かせてください。

現代社会はグローバル化し、情報の取得や発信も、誰でもが気軽にできる状態になっています。溢れる情報の中には、真実とフェイクが入り混じり、精度の高低もバラつきがあります。いろいろな情報について鵜呑みにするのではなく、自分自身で客観的に判断し、取捨選択することが大事だと思います。また、「人の縁」は財産です。かけがえのない人、出会えて良かったと思える人、自身の価値観や人生観に影響を与える人、いつ出会うか分かりませんので、一期一会の出会いを大切にしてください。特にロータリークラブの方々は、知り合うチャンスの少ない人もたくさんいらっしゃいます。せっかくなので積極的にコミュニケーションをとって、どんどん勉強させてもらってください。皆さん親切にしてくださると思います。あとは「ATM」、A=明るく、T=楽しく、M=前向きに、お互い頑張っていきましょう。

取材後記

志、想い、信念に基づく熱い漢でした。その眼差しは、しっかりと前を向き、いつの日かご自分の描く夢を実現するために努力する。そんな印象を感じる方で、強いリーダーシップを持った好青年でした。ぐいぐいと私も引っ張られ、時間を忘れてお話を伺ってしまいました。誰かへ手を差し伸べようとする限り、今は出来てないという事実はついてまわります。人の役に立とうとすることは、自身の無力さや弱さと向き合うことでもあります。でも決して後ろ向きの動機ではなく、「何かできるようになりたいと思う」からこそ継続できるのかもしれません。コロナ渦で、なかなか会って話す機会が得にくいですが、顔を会わせて直接お話するのは楽しいです。私自身も元気を分けてもらい、知的好奇心を擽られる会話が出来る幸せ、一期一会の出会いにあらためて感謝するインタビューでした。


 

陳 瑶(ちん よう) Chen Yao
2012-14年度 米山記念奨学生
スポンサークラブ:四日市東RC

中国西安出身。四日市大学を経て、東京外国語大学博士前期課程を修了。現在は、株式会社ミスミIAグローバルマーケティング本部IA日本マーケティング推進室エレクトロニクス営業チームで東日本エリアマネージャーとして勤務している。2012-14年度米山記念奨学生、2018-20米山記念奨学学友会会長。

インタビュアー:鈴木 豪(東京八王子北RC)
ロータリーファミリー支援委員会 委員長:青柳 薫子(東京広尾RC)
Rotary Family Voice 編集長:根岸 大蔵(東京城西RC)

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